●アメリカの教育制度

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アメリカでは、学区と呼ばれる地域によって、教育制度や学校制度が異なっています。ただし、基本的な部分、つまり10年間以上の初等教育・中等教育、また高等教育における準学士・学士・修士・博士という4段階(博士課程は、修士課程と並列して存在することがある)の学位制度などは、どの地域にも共通です。.

アメリカでは、特別支援教育をはじめとするオルタナティブ教育が盛んで、公立校・私立校に加えてホームスクーリングも合法となっています。平均すれば、だいたい日本の高校1年生くらいまでの内容を大学入学までにやるというカリキュラムになっているようです(しかも日本でいう英語のような「外国語」に相当する科目は普通は無い)。

成績優秀な学生の中には、積極的に高度なことを自分で学ぼうとする学生も多く、そのような学生の後押しをする体制が整えられています。そのため一部の有名校の授業レベルは一般に非常に高くなっています。

そして、教育の質が高ければ高いほど学費も高額になる傾向があり、俗に一流と呼ばれる大学では、年間の学費が日本円にして300万円を越えるところもざらです。しかし、大学院の自然科学系や工学系においては、ほとんどの学生が後述の「TA」や「RA」をすることにより、学費が全額免除になり、十分な生活費も支給されるのが一般的になっています。

アメリカの教育は、独自のプラグマティズム(実際の役に立つことを学ぶべきだという考え)の伝統を有するとともに、ヨーロッパに由来する教養主義的なエリート教育の伝統も保持し続けてきています。

また個人主義の社会文化を反映して、基本的に個人の自主性を尊重する傾向があると言われています。決まりごとなども、すべての点において交渉の余地があり、入学選考時にも成績だけでなく様々な角度から吟味がなされるそうです。

研究面でも、世界的に有名な総合大学も数多く存在し、日本を含め世界中から多くの留学生を惹きつけています。大学院においては留学生が特に多く、過半数を留学生が占めることも珍しくはありません。

アメリカ最古の高等教育機関とされるハーバード・カレッジ(現在のハーバード大学)は、1636年に設立されたものです。以後、東海岸には幾つかのリベラルアーツ・カレッジが誕生し、その後は、開拓とともに西部にも数多くの学校が作られるようになっていきました。初期の学校はほぼ全て私立大学でしたが、イギリスからの独立後は州立大学が作られるようにもなりました。

●アメリカの初等教育

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戦後の日本がアメリカの教育制度を模倣したため、アメリカの学校制度と日本の学校制度には似た部分が多く、日本人にも分かりやすくなっています。ただし日本との大きな違いは、就学年齢・高校卒業資格などが州によって異なっている点や、各学区の権限が非常に大きく、学区によって始業日・終業日・休校日・年間授業時間、中学校や高等学校の進級学年の区切り、カリキュラムの内容、飛び級などの方針が異なる点です。

アメリカでの学年の数え方も、特徴的です。小学校1年から12年まであり、中学・高校になっても1年から数えなおさず順番に数えます。教育課程に日本の幼稚園(英 kindergarten)の年長組に当たる1年間を含めるのが一般的であるため、通常は初等・中等教育を称してK-12(幼稚園から12年生まで)と呼んでいます。

義務教育が始まる年齢は、州によって5歳から7歳と開きがある上に、学年の区切り日 (cut off date)が日本のような全国一律(4月1日)ではなく、ミズーリ州の8月1日からコネチカット州の1月1日[3]まで5ヶ月もの開きがあります。

義務教育の年限は地域によって異なり、50州のうちで、16歳までを年限とするのが30州、17歳までが9州、18歳までが11州となっています。

・就学前教育
初等教育が始まる以前の就学前教育には、プリスクール・ナーサリースクール(preschool, nursery school)などと呼ばれる教育機関が存在します。日本で言う幼稚園、保育所に相当するところです。日本の年中組にあたる学年は、幼稚園(キンダー)に入る手前の学年ということでプリ・キンダー (Pre-Kinder)とも呼ばれています。これらの就学前教育は3~5歳で始まり、1~2年間であることが多いです。現在、プリ・キンダーには毎年約100万人が、幼稚園には約340万人の幼児が入園しているそうです。

一方チャイルド・デイケアは、新生児・乳児から子どもだけでの留守番が許されない小学校6年生までの年齢を対象した用語であります。就学前年齢に限っていえば、デイケアは託児所であり、学校環境に準じる形で教育を施すプリスクールやナーサリースクールとは異なっています。

・初等教育
アメリカの初等教育は、原則として6歳から小学校(elementary school)において始まります。しかし、大部分の地域に小学校付属の幼稚園(半日または全日)があり、私立幼稚園も多いです。とくに小学校併設の幼稚園の教育内容は「小学0年生」というべきものであります。

そして毎年、約370万人の児童が小学1年に入学しています。アメリカの小学校教育の初めの1~2年ぐらいまでを児童期教育(early childhood education)と呼ぶことがあります。

初等教育は、幼稚園が義務教育で小学校が6年まで設置されている学区は7年間、幼稚園が義務でなく6年生から中学に進む学区では5年間で、飛び級が許される場合は更に短くなります。9年生から高等学校に進む学区では、中学2年(8年生)までを初等教育とする場合もあります。

アメリカの中等教育

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前期中等教育機関は下級高等学校(junior high school)、あるいは中学校(middle school)と呼ばれています。

後期中等教育機関は、高等学校(high school)と呼ばれ、原則として単位制である点は日本と同様ですが、日本の高校よりもさらに選択できる科目の幅が広いことが多いです。ただし、そのカリキュラムは平均して日本の中学校から高校1年生程度までの内容となっており、特に数学には重点を置いていない場合が多いようです。一部の有名進学校は非常に高度な内容も扱っていますが、学費も一般には非常に高額です。

高等学校は大まかに次の4種類に分かれます。

一般校(公立・私立)
1. 職業訓練・専門学校(Vocational-technical school 略称 Vo-Tech)

2. オルタナティブ校 Alternative high school
オルタナティブ校とは”at-risk” と呼ばれる、学力面・社会面で中退の危機にある生徒を対象にした高等学校のことです。広義ではマグネット・スクール、ギフテッド教育校、特別支援学校など一般校の中で特別プログラムを持つものを指したり、Vo-Techと重複する場合もあります。

3. プレップ校 Prep school
アイビー・リーグなどの名門大学入学を目的とした進学校。大多数が私立で、全寮制である所もある。北東部に多く設立しています。高校を卒業すると高校卒業資格(the High School Diploma)が授与されます。
そして、州が指定する義務教育完了年齢を過ぎれば中退してもかまわないのです。16歳以上の学生の中退率は11%に達しているそうです。また中等教育に在籍中の全生徒の7%程度は中等教育課程を終了できないため、高校を卒業しないまま退学した者が後になってから勉強をし直すことで得られるGED資格(General Educational Development Certificate)も用意されています。これは、日本における高等学校卒業程度認定試験(高認、かつての大検)にあたるものに近いですね。毎年280万人が卒業資格を、50万人がGEDを得ています。

4. 特別支援教育
アメリカでは約600万人の子どもが生活・学習上の障害を持つことから、特別支援教育 (special education)を受けています。
特別支援教育においては、通常より長い20~21歳までが義務教育年限となっている。これに加えて、何らかの分野で秀でた才能を持つ「ギフテッド」と呼ばれる児童・生徒のうち約240万人がギフテッド教育の特殊プログラムに参加しています。特別支援教育を受ける子どもすべてに、個別教育計画(Individualized Education Program 通称IEP)という個々人の障害に対応した自立のための長期教育計画書が作成されることになっています。この計画書をもとに教職員、専門家、医師達がチームとなって取り組み、計画書どおりの教育を完了した児童・生徒・学生にも卒業資格が与えられるわけです。